※当ブログの趣旨※

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某映画雑誌編集者との酒の席で「映画レビューを書くべき」と勧められ、「チラシの裏で良ければ」と開始した、基本は身内向けの長文ブログ。
決して知識が豊かとは言えないライト映画ファンが中の人です。

・作品を未見の方には、(極力ネタバレせず)劇場に足を運ぶか否かの指針になれば
・鑑賞済みの方には、少しでも作品を振り返る際の余韻の足しになれば

この2点が趣旨であり願いです。定期的にランキングは付けますが、作品ごとの点数付けはしません。
作品によってはDISが多めになります。気分を害されましたらご容赦下さい。
たまーに趣味であるギターや音楽、サッカー観戦録、スノーボードのお話なども登場します。

2012/02/27

長文映画レビューシリーズ 『ペントハウス』



ペントハウス
ベン・スティラーとエディ・マーフィが初共演し、大富豪にすべてを奪われたビルの使用人たちがチームを組んで復讐する姿を描くアクションコメディ。監督は「ラッシュアワー」のブレット・ラトナー。
ーーー映画.comより抜粋


“コメディとしてもサスペンスとしても良く出来てる”との前触れを耳にし鑑賞。いわゆるチーム・クライム物と言って良いと思うのですが、あまり前情報を入れずに観た方が楽しめる作品ですね。とにかく、映画が始まった瞬間からは予想も出来ない所へ連れてってくれる、素敵な映画体験を味わえました。

ケイシー・アフレックが出てるって事を知らなくて、「あぁ、この役柄『オーシャンズ』シリーズ以来久々に観たなぁ」と思ってたら、映画自体も『オーシャンズ』っぽく転がって行きます。ただ、『オーシャンズ』と決定的に違うのは…


※以下、多少のネタバレが含まれます※


『オーシャンズ』シリーズが、プロの犯罪者集団が結託するクールな怪盗モノ(でも『12』はクソ)だとしたら、本作は素人が雁首を揃えた“ポンコツ野郎Aチーム”。足りない頭を必死に絞って、奪われた資産を盗み返す、弱者の一撃のお話なんです。このフックだけでちょっと楽しい。

主人公がそれぞれの腕を見込んでメンバーをスカウトをしに行くあたりも、実に『オーシャンズ』的ですが、その見込んだ腕が予想以上にポンコツで使えない。肝心の窃盗シークエンスも実にドタバタで、なかなか予定通りには進まない。これだけプランの脇が甘いのに、高所からのカメラワークも相まって、クライマックスはなんだかんだでゾワゾワと手に汗握る名シーンになってるのが巧い。悔しいけどハラハラしてしまいました。

ラストは序盤の伏線を綺麗に回収して、“主人公が少しだけリスクを負うが、他の皆は全員ハッピー!”という、正に『オーシャンズ11』的一発逆転どんでん返しで締め括ります。ここは単純に痛快!超気持ちいい!特に“ポンコツチーム”を横一列に並ばせて歩かせるシーンをしっかり入れてくるあたり、ベタだが憎めない!作り手はチーム物の肝を良く理解してますよね。

ただし冷静に考えて、その痛快なラストも「車の中にアレが入ってなかったら、そもそも車がアレじゃなかったら」何一つ成立してなかったんですよね。極めて行き当たりばったりのクセに、主人公がしたり顔で「チェックメイト」とかぬかしやがりますが「お前、出たとこ勝負をたまたま勝ったに過ぎないから!!」と突っ込みを入れたくもなります。車を「どうやってあの場所に上げたのか」も曖昧にして誤魔化された気もしますし。

それでも、これだけ楽しい要素を詰め込んでテンポ良く語り、最後は痛快なカタルシスを産み出して、エディ・マーフィーの顔芸とマシンガントークも久々に堪能できて、104分というコンパクトな尺に纏めてくれたら、OK!!!『キツツキと雨』の制作陣もこういう語り口を勉強して頂きたいものです。

<結論>
ツッコミどころは少なくないものの、ラストはキッチリ締め括って、“弱者の一撃”を痛快且つコンパクトに描いてくれた、チーム怪盗モノとしての佳作に出会えました。「必見!」とは言えないかもしれませんが、“時間が合ったら観ると楽しい映画”として最高でした。