※当ブログの趣旨※

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某映画雑誌編集者との酒の席で「映画レビューを書くべき」と勧められ、「チラシの裏で良ければ」と開始した、基本は身内向けの長文ブログ。
決して知識が豊かとは言えないライト映画ファンが中の人です。

・作品を未見の方には、(極力ネタバレせず)劇場に足を運ぶか否かの指針になれば
・鑑賞済みの方には、少しでも作品を振り返る際の余韻の足しになれば

この2点が趣旨であり願いです。定期的にランキングは付けますが、作品ごとの点数付けはしません。
作品によってはDISが多めになります。気分を害されましたらご容赦下さい。
たまーに趣味であるギターや音楽、サッカー観戦録、スノーボードのお話なども登場します。

2012/02/20

長文映画レビューシリーズ 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』



「9・11文学の金字塔」と評されたジョナサン・サフラン・フォアによるベストセラー小説を、スティーブン・ダルドリー監督が映画化。9・11テロで最愛の父を亡くした少年オスカーは、クローゼットで1本の鍵を見つけ、父親が残したメッセージを探すためニューヨークの街へ飛び出していく。脚本は「フォレスト・ガンプ 一期一会」のエリック・ロス。オスカーの父親役にトム・ハンクス、母親役にサンドラ・ブロック。



「2カ月ちょっとでこんなに良い映画ばっかり観れていいのかなぁ?」となぜか申し訳ない気持ちに襲われるくらい、今年の名作ラッシュ感は半端無い。その中でも極めて“泣ける映画”として、原作小説既読層からプッシュされていた本作。当方はまだ原作を読めていませんが、無理やりにでも時間作って絶対に読みたいと思っています。

端的に今の感想を一言でまとめると…

どんだけ泣かすねん!!

そりゃ“9.11”を少年からの視点でこれだけ悲しくも美しく語られたら泣くよ!ズリーよ!
複数作られてきた“9.11映画”の中で、間違いなくダントツのクォリティを放つ傑作でしょう。日本人でこれだけ泣ける作りなんだから、米国人が観たら干からびちゃうんじゃないの?

ただ同時に、これ絶対原作小説の方が面白いと確信に近いレベルで感じました。原作の持つ“活字のカロリー”が、映画の尺に明らかに収まり切って無いのが分かります。映画は映画で素晴らしいのですが、こういう“主人公視点のモノローグで語るお話”は、絶対小説の方が入り込める筈です。

しかしこんなにもアメリカ賞レース向けの作品なのに、アカデミー作品賞は下馬評通り『ヒューゴの不思議な発明』が獲るんですかね?“9.11”から10年後に本作が映像化された意義は少なくないと思うのですが。そしてどう考えても、主演男優賞は文字通り“オスカー”役のトーマス・ホーン君にあげるべき!!


※以下、多少のネタバレが含まれます※


なにしろですね、この難しいオスカー役を見事なまでに演じ切ったトーマス君に大絶賛を贈りたいのです。中盤、“グランパ”に9.11のトラウマを一気に捲し立てるシーンと、終盤“ブラックさん”に“6件目の留守電メッセージ”を語るシーンの緩急、何ですかアレは。途中からオスカー君が画面で物憂げな表情してるだけで、もうそれだけで泣けてきちゃうんだから末恐ろしい役者が現れたな、と。ここは掛け値なしで称賛したい点。

トム・ハンクスが出てて、脚本がエリック・ロス…という事を意識しなくても、本作は“2000年代のフォレスト・ガンプ”として観ちゃいましたね。すこしだけ障害があり、でも限りなくピュアでジーニアスな主人公が走る。ガンプは最愛の人と息子に救われたけど、オスカーは母に救われながら、意図せず多くの“ブラックさん”(=NY市民)を救っている。この構図だけでも涙!。

メンターとしての“グランパ”の存在が非常に効果的に作用してましたし、終盤のサンドラ・ブロックの「Let it go,Let it go…」から始まる“ブラックさん巡りの旅の真実”といい、グランパに無理やり留守電聞かせる鬼畜の所業といい…もうね、泣くに決まってんだろそんなもん!!「もう…勘弁して下さい…」って涙腺が悲鳴を上げるレベルで、とにかく泣かせ所の容赦無いつるべ打ちなわけです。少なくとも、こんなにもタンバリンの音が悲しく聞こえる映画は無いのでは。そして「歩け歩け地獄ってのはこういう風に描くんだよ!!」と映画版ヒミズのスタッフに見せてやりたい気持ちになりました。“鍵”が直接的には“パパとの8秒間”を埋めるキーにはならないのも巧いなぁ。

唯一どうしてもイチャモンを付けたい点として、“グランパ”が非常に魅力的に描かれていただけに、最後までオスカーの成長と寄り添わせて欲しかった。これは尺の問題でしょうが、彼が失語してしまった原因等もしっかり回収してくれたらほぼ文句は無かったです。


<結論>
言ってしまえば「アメリカのアメリカによるアメリカの為の映画」で、9.11が本来持つ根の深さや問題は、J・エドガーよろしく“抹消”しています。ゆえに「まーたアメリカのアメリカ賛美か」と取る事も出来なくは無いとも思います。
でもあくまで本作は、「あるヘソ曲がりな少年がトラウマを乗り越え、意図せず周りを少しだけ幸福にしながら成長していく」というお話こそが本筋で、ここは本当に良く出来ていると思います。震災を経験したばかりの我々にも響く要素が数多くあるのでは。

そこまで深く考えなくても、単純に「泣きたい!!」と、映画にデトックスを求める方にも自信を持ってオススメ出来る良作。原作小説を読み込んで、さらに涙腺を虐め抜いてやろうと思います。