ミレニアム2 火と戯れる女
敏腕ジャーナリストのミカエルと天才ハッカーのリスベットが協力し、大富豪バンゲル家で起きた連続殺人事件を解決してから1年。リスベットはこつ然と姿を消したままだったが、少女売春組織を追っていたジャーナリストの殺害現場でリスベットの指紋がついた銃が発見される。無実を確信するミカエルは、仲間とともに事件の真相を追うが……。
ーーー映画.comより抜粋
デヴィッド・フィンチャー版の『ドラゴン・タトゥーの女』を鑑賞して以降、すっかりリスベット・シンパに成り果てております。スウェーデン版の『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』もミステリーとして最高だったので、早くミカエルとリスベットの凸凹コンビに会いたい!と。二人の活躍をもっと見せてくれ!と。意気揚々とレンタルで鑑賞したわけです。
結果、この「もっとミカエル&リスベットの活躍を見せてくれ!」という期待は、盛大に裏切られることとなりました。
少し髪が伸びたリスベットが相変わらず美しいし、「リスベットは殺していない」と断言するミカエルも超カッコイイ。リスベットに助けられた前作と逆転して、ミカエルがリスベットを助け出そうとする展開なのか!燃える!!早く二人でタッグを組んで、謎を解き明かしてくれ!
…と序盤は身も心も前のめりで鑑賞していたものの、主役二人の物語のクロスをラストのラストまで溜めこむ作りに、中盤からはやや退屈さを覚えてしまいました。それ故に、ようやく二人が一年ぶりに邂逅するシーンでは、形容のし難い感動に襲われるのですが、なんぼなんでも“溜め過ぎ”なのでは…?
徹底して男性を最低のクソとして描くアイデンティティは根底にしっかり流れていて、これぞミレニアム!という雰囲気を感じる事も出来るものの、どうも演出がチープでテンポが悪い。180分があっという間だった『ドラゴン・タトゥー』からどうしてこうなった?と思っていたら、案の定前作からは監督が交代していたんですね。
特に格闘シーンのテンポの悪さは顕著。“無痛症の木偶の坊”という、いくらでも魅力的に描けそうなキャラも、ただの鈍重な間抜けにしか見えなくなっているのはいただけない。ラストに至ってはあの金髪、ほぼ居なかったかの様な扱いにされてるし。
命の恩人であるリスベットを蔑ろにして、愛人と現を抜かしていたミカエルが、ようやく彼女の抱える傷の深淵を知る事こそが最大のテーマなので、「二人の活躍で痛快な謎解きが見たい!」とか「二人の不思議な恋の行方も気になる!」といった様な期待には、ハナから一切応える気が無い作品なんですね。「ミステリーに寄せる気も有りませんよ?」と作り手から言い放たれた気すらしました。
<結論>
そもそもミステリーですらなくなって、ミカエルがリスベットの抱える痛みの多さに(いまさら)気付く為の130分。それはそれとして楽しむ事は出来るのですが、やはり二人の凸凹タッグ復活に大きなを期待していた分、多少興が削がれた気はしてしまいます。噂では聞いていたものの、世の“三部作”の系譜にありがちな、“3の為の2”として大胆に割り切って作られている印象でした。それはそれでとっとと3を観たくもなりますし、これだったらフィンチャーに思いっきりキャラをデフォルメして作ってもらった方が、2作目以降は面白くなるかもな…という希望を持つ事も出来ましたね。1作目だけで投げないでね、フィンチャーさん。
この『火と戯れる女』の続編にして、ミレニアムサーガの最終章となる『眠れる女と狂卓の騎士』を次のレビュー…としたいところなのですが、時間の都合で次回の作品は『スーパー!』のいまさらレビューとなります。