※当ブログの趣旨※

※当ブログの趣旨※

某映画雑誌編集者との酒の席で「映画レビューを書くべき」と勧められ、「チラシの裏で良ければ」と開始した、基本は身内向けの長文ブログ。
決して知識が豊かとは言えないライト映画ファンが中の人です。

・作品を未見の方には、(極力ネタバレせず)劇場に足を運ぶか否かの指針になれば
・鑑賞済みの方には、少しでも作品を振り返る際の余韻の足しになれば

この2点が趣旨であり願いです。定期的にランキングは付けますが、作品ごとの点数付けはしません。
作品によってはDISが多めになります。気分を害されましたらご容赦下さい。
たまーに趣味であるギターや音楽、サッカー観戦録、スノーボードのお話なども登場します。

2012/03/04

長文映画レビューシリーズ 『ヒューゴの不思議な発明』




ブライアン・セルズニックの冒険ファンタジー小説「ユゴーの不思議な発明」を、マーティン・スコセッシ監督が3Dで映画化。駅の時計台に隠れ住む孤児の少年ヒューゴの冒険を、「映画の父」として知られるジョルジュ・メリエスの映画創世記の時代とともに描き出す。主人公ヒューゴを演じるのは「縞模様のパジャマの少年」のエイサ・バターフィールド。イザベル役に「キック・アス」「モールス」のクロエ・モレッツ。2012年・第84回アカデミー賞では作品賞含む11部門で同年最多ノミネート。撮影賞、美術賞など計5部門で受賞を果たした。
ーーー映画.comより抜粋

予告編を観た限りでは、「何でこんなに前評判が高いのだろう」と疑問に思っていた作品。スコセッシの集大成にして最高傑作!なんて推しがあちこちでされる理由を確かめるべく鑑賞して参りました。結果、雑誌やらネットやら映画評論家やらが褒めそやす理由はよく分かりました。いつも通りものすごく乱暴に一言でまとめると、こんなところ。

いやぁ、映画って、本当にいいものですね~(しみじみ)

…と、草葉の陰から水野晴郎さんが微笑み掛けているかの様な作品なんですね。
それも、当ブログでも取りあげた『宇宙人ポール』的に、要所で名作映画へのリスペクトを散りばめるというよりも、もっとストレートに映画の素晴らしさを語り聞かせるスタンス。そりゃ映画関係者は腐すわけにはいかないよね。いや、実際面白かったんですけど、正直そこまで誉めるか~?と、前評判の高さ故に思ってしまった部分もあります。ただ、後述するある1点がパンチラインとなり、それだけで個人的には「観て良かった」と素直に思わされる事となりました。

尚、時間の都合で2D版を鑑賞してしまったのですが、あのジェームズ・キャメロンも太鼓判を押したという3D版でもう一回観直したいですね。


※以下、多少のネタバレが含まれます※


3Dで観直したくなる最大の理由として、とにかくカメラワークが「楽しい!」の一言なんですよ。パリの上空から始まって、ヒューゴの顔にカメラが寄るまでをワンカットで見せるオープニングがその象徴で、実に正しいCGの豪華な使い方。画的なインパクトという意味でも構成的にも、当方はFINAL FANTASY VIIのオープニングムービーをちょっと思い出しました。これに限らず全編を通して、縦横無尽自由自在に動き回るカメラと、そして歯車を中心としたギミックの面白さは必見ですね。オスカーの“ルックス系”の賞を総ナメにしたのも頷けます。

ストーリーとしては、「映画の父」と呼ばれるジョルジュ・メリエスの物語を少年の目線で追う事で、『月世界旅行』の製作譚も同時に追う事が出来る作り。後付けで色を塗ったフィルムの独特の発色具合なども見所。
こういった、映画ファンが誉めちぎりたくなるような“映画愛”的レビューは、あちこちで様々な方が、こぞって自身の映画バックグラウンドを示す意味でも書き綴っていますので、是非色々閲覧してみてください。

先述した、当方が構造としての“映画愛”よりも、この作品で強く胸を打たれてしまったパンチライン、それは
「“ハッピーエンド”は映画の中だけのものなの?」
という問いに、
いや!そんなことはない!!
…と、はっきりと宣言する点ですね。でもそれだって映画の中のお話じゃん!って突っ込まれてしまうかもしれませんが、やっぱりエンターテイメントの基本は「笑顔」と「ハッピーエンド」に限る!と恥ずかしげも無く考えているタイプなので、スコセッシが正面切って「ハッピーエンド」を描き切った事に、素直な感動を覚えてしまいました。いや、もちろんピカレスクな話も好きだし、前回の更新の『ポエトリー』みたいな作品も好きですよ。でもせめてフィクションの世界だけでも「笑顔とハッピーエンド」が最高のエンターテイメントとして成立して欲しいじゃないですか。『宇宙人ポール』を「今年ベスト級!」と評価した最大のポイントはここにあります。

あまりの前評判の高さもあって、そこまで「大傑作!」と言い切るには、中盤ちょっとお話がダレるな~とか、全体的に登場人物がカリカチュアされ過ぎてないかな~とか、『(500)日のサマー』や『キック・アス』の頃のクロエ・モレッツたんは何処に行ってしまったのかな~とか、サシャ・バロン・コーエン大人し過ぎてつまんね~な~などなど、どうでもいい事も含めて言いたい部分も少なくは無いです。ただ、マーティン・スコセッシという映画バカが「映画、最高!!」と高らかに声を上げた、その意気は余りあるほど感じ取る事ができました。


<結論>
前評判を見て、映画ファンの為の“敷居の高い作品”と思われるかもしれませんが、決してそんな事はありません。音楽の使い方や演出の付け方は、日本人だったらジブリ映画的にも楽しめると思います。実際、カリオストロっぽい(とも言える)シーンもありますからね。今年の感動系大作映画の中では『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』と双璧を成す(構造も良く似てる)、上質な作品でした。アトラクションって言っても良いかもしれないですね。


次回はあの作品の本家スウェーデン版、『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』をレビューします。ハリウッド版とはまた違って、これまた素晴らしい作品でした。