※当ブログの趣旨※

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某映画雑誌編集者との酒の席で「映画レビューを書くべき」と勧められ、「チラシの裏で良ければ」と開始した、基本は身内向けの長文ブログ。
決して知識が豊かとは言えないライト映画ファンが中の人です。

・作品を未見の方には、(極力ネタバレせず)劇場に足を運ぶか否かの指針になれば
・鑑賞済みの方には、少しでも作品を振り返る際の余韻の足しになれば

この2点が趣旨であり願いです。定期的にランキングは付けますが、作品ごとの点数付けはしません。
作品によってはDISが多めになります。気分を害されましたらご容赦下さい。
たまーに趣味であるギターや音楽、サッカー観戦録、スノーボードのお話なども登場します。

2012/01/28

(いつも以上に)長文映画レビューシリーズ 『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on』


DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら夢を見る


女性アイドルグループ・AKB48に密着したドキュメンタリー第2弾。シングルCDではミリオンセラーを連発し、コンサートは3日間で9万人を動員するなど、彼女たちのすべてが変わった激動の2011年を、前作をしのぐ膨大な収録テープと独占インタビューでつむいでいく。監督は、「コネコノキモチ」の高橋栄樹。---goo映画より抜粋


いざ劇場版ドキュメンタリー第2弾の公開!というまさにその日に、AKB自体は古参メンバーの解雇劇が勃発。特に平嶋夏海の脱退は、『SLAM DUNK』で言えば木暮が湘北高校を退学するに等しく、グループ史上最悪の1日を展開していた模様。当方はそんな展開はつゆ知らず、某紙編集者M2さんと一緒に舞台挨拶を兼ねた上映を2回鑑賞して参りました。

当ブログでも以前少し触れたように、1年前に公開された前作のドキュメント映画は、殆どドキュメントの体を成していない、只のインタビュー集でしかなく、さほど鑑賞の価値は無いと評価しました。故に、今作も当たり障りの無いPV的作品に着地するのだろうと予想しておりました。実際、監督にはAKBのPV撮影監督でお馴染みの高橋栄樹氏でしたし。

…しかし、結論から言って本作は…

ドキュメンタリーとして、よく出来てる!!

…と言って差し支え無いと思っています。これはAKBへのパーソナルな思い入れ等は一切度外視しての評価。可能な限り客観性を持って出来事を切り取り、観客に伝えようという、作り手の「頑張り」を確かに感じ取る事が出来ました(あくまでカッコ付きの「頑張り」ではありますが)。それも、前作のような既存のファンへのサービス映像集ではなく、「外」の観客へ伝えよう、観てもらおうという意志が明らかに込められています。この「外」へのベクトルが最大限に評価したい点。


※以下、多少のネタバレが含まれます※


「総選挙やじゃんけん大会でのドラマ」
「過酷な夏のライブでのドタバタ過ぎる舞台裏」
「新チーム内の不祥事による葛藤」
そして、「震災」

2011年のAKBを取り巻いた数々の出来事を、「震災」との向き合いを柱にし、時系列順にメンバーのインタビューを挟みながら「そんなトコまでカメラ回したるなよ…」と言いたくなるレベルでメンバーに密着して記録。4部構成でこの1年を語ります。
ハッキリ言って、上記のような出来事は「震災」を除けば所詮マッチポンプでしかなく、幾らでも冷めた目で観る事は出来ます。おまけに、唯一の想定外であり同時に最大のテーマであった「震災」との向き合いにも、岩田華怜という仙台出身の研究生を象徴的に取りあげ、陸前高田の「一本松」へ、ある種フィクショナルに物語的な集束を作り出してしまうので、"これはドキュメンタリーですらない"とシビアに評価されても仕方無い作品でしょう。

それでも本作は、たとえAKBに興味の無い層でも一見の価値がある、引力を有した作品である事は間違いないと考えます。高橋監督は、そういった層の鑑賞に耐えられる作りにすると同時に、熱心なファンにも満足して貰える作りにしようと、相当腐心したのでは。とにかく観客を飽きさせないようにしよう、興味を持続してもらおうという「頑張り」が細部に見受けられました。
最もネームバリューのあるトピック「総選挙」の描き方が顕著。単純に前田敦子大島優子の関係性を切り取って、これをクライマックスとするのではなく、二人の感動的なシーンの後に、指原莉乃北原里英をコミカルに描く事で見事に緩急を付けてくれます。
本編を通して描写される被災地訪問の映像も、前田敦子のソロコンサートの音源をバックに纏める巧みさで、非常に印象的なシーンになっていますし、音楽の使い方は流石PV監督といったところで実に秀逸。北原の「How old are you?」だけはピチっとBGMを止めるなど、まぁ気配りが行き届いています。
ハイライトである西武ドームコンサートの舞台裏は「スタッフちゃんと段取りしとけよ…」と呆れ顔になりつつ、メンバー曰く"ホラー映画"さながらの様相を呈していて、これだけでも初見層にはかなりの迫力があるでしょう。"影アナ"で必死に盛り上げようとしている大島らチームKメンバーと、たった一人で、壁に向かって静かに心を整えようとしている悲壮な前田との対比などは、この事態を知っているファンに対しても、新鮮な切り口になっていたのではないでしょうか。
新チーム内のトラブルの件にしても、まずチーム結成のいきさつをちゃんと説明し、予め大場美奈の呑気な姿を見せておいて…という落差を、明らかに意識して作っていましたね。これも"親切な作り"だなぁと。監督、「頑張った」なぁと思わずにはいられないシーンでした。

被災地シーンは同じカットが使い回されていたり、わざわざ大場を一本松の下に立たせて物憂げな表情をさせたり、岩田に誰宛だか分からない、作り手が用意したとしか思えないような手紙を朗読させる等、ラスト付近は急にケレン味が出てしまっているのが非常に残念。このラスト近辺の作りだけで、あらゆる事柄をマッチポンプで感動的な美談に仕立て上げて、AKBという存在を全肯定しているだけに見えてしまう部分は否定できません。既定路線のレールが敷かれた上で、"身内の監督"として出来ることの限界も垣間見た気がします。

それでも、焦点の定まらない目でフラフラとチームAの円陣に加わる前田に、言葉にならない感情を抱いてしまうし、篠田麻里子の胸で号泣する大島のシーンに、会場のBGM『ここにいたこと』が奇跡的に聴こえてくるなど、ファンにとっては前作を優に凌駕する垂涎モノの映像集である事は疑う余地がありません。同時に『AKBの2011年』のしっかりとした振り返りと、『AKBってこんなグループ』という端的な説明をキッチリ両立させています。


本人達の不祥事も、大人達の不手際も、そして震災すらも飲み込んで、良くも悪くもエンタメ化してしまう、恐るべき現代のモンスターコンテンツを目撃するのに、こんなに適した作品はありません。是非劇場で観るべき!

今作の物語的集約点である、陸前高田の一本松は、皮肉にも保護の断念が決定し、枯れていくのを見守るしかない状況だそうです。
愛されるべき初期メンバーが自らの不手際で退場してしまったAKB48の道行を想いつつ、例に漏れずだらだらと駄文を綴ってしまった所存でございます。
ちなみに僕は、不覚にも島田晴香に泣かされてしまいました。