※当ブログの趣旨※

※当ブログの趣旨※

某映画雑誌編集者との酒の席で「映画レビューを書くべき」と勧められ、「チラシの裏で良ければ」と開始した、基本は身内向けの長文ブログ。
決して知識が豊かとは言えないライト映画ファンが中の人です。

・作品を未見の方には、(極力ネタバレせず)劇場に足を運ぶか否かの指針になれば
・鑑賞済みの方には、少しでも作品を振り返る際の余韻の足しになれば

この2点が趣旨であり願いです。定期的にランキングは付けますが、作品ごとの点数付けはしません。
作品によってはDISが多めになります。気分を害されましたらご容赦下さい。
たまーに趣味であるギターや音楽、サッカー観戦録、スノーボードのお話なども登場します。

2011/12/15

長文映画レビューシリーズ 『トーキョードリフター』


トーキョードリフター

ミュージシャン前野健太の吉祥寺での路上ゲリラライブの模様をワンカットで撮影した「ライブテーブ」で、第22回東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」作品賞を受賞した松江哲明監督が、“3.11”後ネオンが消えて暗く沈んだ夜の新宿、渋谷などを歌いさすらう前野の姿を再び追った本作。

結論から言います。

夜の街での弾き語り映像集として○
震災後のトーキョーを切り取った作品としては×

尚、非常にかっちりしたレビューが映画芸術さんの方に上がっていますので、より深くこの作品を読み解きたい方はご参照ください。こちらでは緩~くレビューしてみようかと。

なにしろ、予告編だけを観てドキュメンタリーだと思って観に行ってしまうと、期待外れとなる可能性が高い映画です。
この主演マエケン・監督松江コンビが、こういった映画を通して何をやろうとしているのかは、『ライブテープ』の時のインタビューを読めば一通り把握出来るでしょう。監督自らの言葉にある通り、とにかく"暗い東京"で"前野健太の音楽"を鳴らし、記録する事に意義がある作品で、それが全ての映画。それ故に物語性は実質ゼロですし、セリフも映画的演出もありません。


※以下少々のネタバレ含※


特筆したい点として『かまってちゃん劇場版』や『SR サイタマノラッパー』で素晴らしい音楽効果を演出されていた山本タカアキさんが、今回も非常に良いお仕事をされております。アコギ弾き語り独特のパーカッシブ感を、街の喧騒に負けることなく主張し過ぎる事もなく、絶妙なバランスで録音されていて実にお見事。音が街に"抜けていく"感覚と言うか、リバーブがリアルで丁度良いので、一度でもアコギ抱えて路上に立った事のある人間ならば「久々に夜の駅前でも行ってみるか」となる事請け合いです。よく雨の中をギター抱えてバイク飛ばしてスタジオへ走った記憶が呼び覚まされました。
作中で使用するギターがMartinやGibsonではなくて、YAMAHAとMorrisというのも、自身の音楽スタイルと映画にマッチしていて良いですね。

残念だったのは、"暗い東京"の切り出しが甘い点。
オープニングから余りにもピントが合わない画が続き、新宿シーンは殆ど暗闇感が感じられず、コンビニも看板こそ消灯はしていても、店内の照明は燦々と輝いている。
中盤のクライマックスと言ってもいい、4曲をノーカットで歌いながら渋谷のスクランブル交差点に到達するシーンでも、勿論平時の渋谷に比べれば暗い事は暗いけど、街頭なんかはいつも通り点灯されていますし、常にほぼ目線の高さにあるカメラからだと大型ヴィジョン等の写りも弱く、『暗闇の東京でトーキョーを歌う』という説得力をもう一つ感じる事が出来ないんですね。

「演出をする気は無い、リアルな東京を切り取ったんだ!」と言いたいのは分かるんです。分かるんだけど、マエケンさんは明らかにカメラを意識して歩きながら演奏場所を変え、"写り映え"するポイントへ移動して行くので、中途半端なPVに見えてなんだかなぁと思ってしまいます。
暗闇だった東京をもっと生々しく切り出すなら、5月末という撮影タイミングは少々遅かった気がしますし、今作だけは映画的に暗闇を演出しちゃうとか、3月の東京をカットバックさせちゃうとか、もう少しだけあざとさが有っても良かったのではないでしょうか。すでに『ライブテープ』を成功させているだけに。


震災で東京が受けたダメージは、勿論被災地での被害とは比較にならない程軽微なものです。
しかし東京に生まれ東京で育った人間からすると、計画停電で本当の暗闇になった街や、棚に何も並んでいないコンビニや、都市としてのあらゆる機能を喪失した東京を体感し目撃している分、"暗い東京"に対する個人的ハードルが上がってしまっているのかも知れません。
少なくともこの映画を観終わっても「あなたよりずっと、この街が好き」と、作り手へ向けて断言出来てしまいます。


…先にケチを付けてしまいましたが、前野健太さんという歌い手は、詞の世界観といい丸くて太い声質といい、ギター抱えて街に立って歌うと、実に東京然とするし画が保ちます。これはロジックで説明し難い、シンガーとしての大きな魅力ですね。ファンならずとも、たまたま駅前で歌ってる路上シンガーの歌声に、思わず足を止めて聞き入ってしまうような疑似体験は楽しめると思います。
そして、セリフはおろか映画的な演出も何も無い映画にも関わらず、夜の東京を抜けた土手でのシーンで言いようのない解放感に包まれ、単車で明け方の橋を渡るシーンでは一気に風景が開けて、心地よい爽快感が広がります。ここは娯楽大作映画に負けないくらいのカタルシスを有しているとさえ思えました。

例えば、愛聴しているミュージシャンのツアーDVDかなんかで、こんな「路上弾き語り映像集」が特典として収録されていたら、涙して愛蔵盤としてしまう事でしょう。但し1本の劇場公開映画として観た場合は、少なからず退屈な作品という感想を禁じ得ませんでした。
60分強と非常にコンパクトな尺で纏められていますので、マエケンファンならば1本のライブを観に行くと思えば十分に楽しめますし、そうでない人もやや退屈を噛みしめながら、マエケンさんと一緒に「ヘビ~ロ~テ~ショ~ン♪」と口ずさみ、ラストの橋の上の疾走シーンでは爽快な風を感じる事が出来る作品ではないでしょうか。
もうちょっと"いつもと違う東京"を体感する事が出来れば、一気に傑作となる可能性を秘めておりました。

今年の映画ランキングも今作を受けて更新致しました。

2011/12/07

長文映画レビューシリーズ 『50/50』


解説 - 50/50 フィフティ・フィフティ

余命を宣告された一人の青年とその周囲の人たちの姿を描くヒューマンドラマ。ガンを克服した脚本家ウィル・ライザーの実話を基に、新鋭ジョナサン・レヴィン監督がユーモアを交えて映画化。出演は「メタルヘッド」のジョセフ・ゴードン=レヴィット、「グリーン・ホーネット」のセス・ローゲン、「スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団」のアナ・ケンドリック。



ジョセフ・ゴードン=レヴィットファンとしては絶対に見逃せない1本。有楽町で観ましたが、土地柄もあってか意外にも年輩層でほぼ満員の入り。シリアスに傾きがちなテーマに対しして、全編を実にコミカルにテンポよく仕上げていて、劇場はしょっちゅう笑い声で沸いていました。
脚本家が実際にがんを告知され、見事克服したという体験談を、安易な感動や恋愛モノに寄せず、前述の通り極端なまでにコミカルに仕立て上げています。このコミカル部は本当に楽しくて、セリフ遊びも巧みで終始笑わせてくれます。

まずこの映画、『(500)日のサマー』と『マイレージ・マイライフ』の続編として観ると、主演の二人(ジョセフ・ゴードン=レヴィットとアナ・ケンドリック)により感情移入して観れます。と言うかキャラが被り過ぎていて、この2作からの後日譚としか観れなかったです。未見の方は、『50/50』と併せて観るとより楽しめるかと。


※以下、少々のネタバレ含※


ただ、特に序盤は、「生死の確立は50/50」という状況に立たされている割に、主人公はどこかのほほんとしているし、彼を取り巻く友人・家族・恋人から医師に至るまで、「ちょっとお気楽過ぎやしませんか?」と言いたくなるレベルで、悪く言えばデフォルメされて描かれます。中盤に主人公が抗がん剤の影響で明らかにダウナーになっている時も、周囲は(特に親友が)相変わらずお気楽。観客側も段々と苛々してきて、「命を扱う話で終始このノリ?」と思い始めた頃、主人公が絶妙なタイミングでブチ切れてくれて、車を使った文字通りの暴走シーンで、我々は決定的に「アダム」に感情移入してしまう。スカッ!とするんですね。名シーンだったと思います。

やっぱりジョセフ・ゴードン=レヴィットに、こういうステレオタイプな若者を演じさせたら右に出る物が居ません。良く分かってるキャスティングです。そこに、"彼女の荷物を勝手に整理する"、"爪を噛むクセがある"と言ったディテールや、「エコ派だし」なんてクスっとしてしまうセリフをサラっと加味してあげる事で、後のお気楽な展開に説得力を持たせたのが良いですね。
要するにこの手の少しナイーブな男は、癌の告知をされ命の危機に瀕している状況すら、ちょっとしたステータスとして自らに酔ってしまう、と。これ、下手に命を題材にした"感動大作"の系譜より、よっぽどリアルだと思いました。主人公に限らず、登場する誰もが「命の危機」をリアルなモノとして受け入れられていないという、その状況がリアルなんです。
体を蝕まれ、同じ病を抱える(でも自分よりずっとずっと年上の)病室仲間は先立ち、念願にして千載一遇の仕事のチャンスすら逃し、いよいよ自らの命の崖っぷちを体感する事で、ようやく主人公は車と感情を暴走させるんですね。そこまで徹底してコミカルに描いたからこその落差で、このシーンに迫力が増していると思いますし、命を軽んじたように見える序盤の演出は必然なんだと思います。
その証拠に、作中に3度ほど「Are you OK?」「All right.」というやりとりが為されますが、3度それぞれに主人公の表情・感情・状態がハッキリと色分けされていて、非常に象徴的なシーンとして演出されていました。是非もう1回劇場に観に行って、特に最後の「All right」を噛みしめたいと思わせてくれる、素晴らしい演出でした。

キャサリンの車を整理するシーンも良い。互いの心の蟠りを整理するメタファーにもなっていますし、酒も煙草もやらず、事故で死ぬのが怖くて免許を取らない男、アダムに「不憫…!」と想いを寄せずには居られません。
そんな不憫なアダムが、のほほんとしながらも成長して、今際の際に父に告げる一言ときたら…。そこまでアダムの両親、特に父親は「ちょっと恣意的に描き過ぎかな?」と観ていましたが、あのシーンはズルい。あそこは涙腺を決壊させるのが人情ってモノです。

唯一難癖をつけるとしたら、別れた元恋人だけが救われていない点でしょうか。あれだけ憎たらしく見えた親友はしっかり補完してくれただけに、この元恋人だけは少々扱いが酷いかもしれない。でもハッキリ言って、そんな事全然気にならない!だって「看護疲れが…」とか言ってやがんだよアイツ!どの口が言うか!!あんな女別れて正解!!
…と思わせてくれる程度に、他のシークエンスが本当に良く出来てますよ。

癌を乗り越えた脚本家は、このストーリーにとにかく『ポジティブ』を込めて、『病なんぞ、笑い飛ばしてしまえ!』というメッセージを込めて世に送り出したかったんでしょう。お涙頂戴や記号的な『死』に走るより、徹頭徹尾コミカルに描き切った今作は、だからこそ難病に向かい合う若者をリアルに切り出せているし、結果的に感動の度合いは増していると思います。
セリフ回しからして、笑わせ所は如何にも今風な作りになっているのですが、有楽町の年輩の紳士淑女達が要所で爆笑してるくらいですから、単純にコメディ単体としても非常に良く出来ていると言える、今年ベスト級の傑作です。是非劇場に足を運んで、『(500)日のサマー』と『マイレージ・マイライフ』のDVDをレンタルして帰られる事をお勧めさせて頂きます。

今作を受けて、今年の映画ランキングも更新致しました。

2011/12/04

「今年初見の」映画ランキング

今年の初見映画でランクを付けてみました。
劇場で公開された作品に、DVDで初めて鑑賞した作品も含まれますよ。

※多少のネタバレを含んでます。ご了承下さい。
※作品に色々難癖をつけてますが、何よりこのレビュー自体が纏りが無くて冗長です。申し訳ございません。

1位 ぐるりのこと。


2008年公開作。今更ながらDVDで観て、もっと早く観るべきだったと深く反省しました。
さりげなく散りばめられた、登場人物達それぞれの背景。
主張し過ぎず、ここぞというタイミングで効果的に使われる音楽。
必然的な"長回し"も良いし、どこを取っても隙が無い傑作でした。
木村多江さんの熱演が言うまでも無く素晴らしいのですが、特筆すべきは
主人公の何処か不安定で頼りないキャラクターが、本当にちょっとした独白シーン一つで、
途端に説得力を帯びる点です。リリー・フランキー氏の、決して達者とは言えない芝居も
この数秒の独白だけで違和感が無くなり、むしろ愛着すら沸いてくる。
この演出には心から絶賛を贈りたいです。カレンダーに記された「×」印だけで
夫婦の生命力が復活していく様を描いたのも、本当にお見事。未見の方は是非。

2位 その街のこども 劇場版


森山未來とサトエリのナチュラルな掛け合いだけでも、物凄く観ていて楽しい。
そこに加えて、神戸の街を歩きながら震災の原体験を徐々になぞっていく、
丁寧で温かい演出もあいまって、自然と涙が溢れてしまう傑作です。
NHKのテレビドラマ作品が元ですが、冗長なクセに的外れなカタルシスをむりくり創出しようとする
近年のテレビ屋邦画作品は、この演出を100万回観て見習って頂きたい。
もう一度"震災"との向き合い方を見つめ直すキッカケにもなるはず。

3位 50/50


詳細は別エントリーにて。
シリアスなストーリーを、あえて徹底してユーモアに描く事で、より力強いメッセージを放つ傑作。
ジョゼフ・ゴードン=レヴィットからは、もう目が離せません。

4位 冷たい熱帯魚


グロテスクな描写ばかりが話題になりがちな作品ですが、
役者陣の芝居の迫力こそが見せ場であり、この点は今年NO,1。吹越満さん、でんでんさん、最高です。
実際に起こった事件を、凄惨な描写を一切厭わず、徹底的にリアルに描く事で
"本当に恐ろしい"作品に仕上がっている点が実に秀逸で、
グロテスク表現はその為の"手段"でしかない訳です。

5位 HAYABUSA BACK TO THE EARTH 帰還編


この作品は少し説明が必要ですね。
惑星探査機『はやぶさ』が、地球に帰還する少し前に制作された、
プラネタリウム用(全天周版)ドキュメント映像に、地球帰還後の後日譚を少し加えた『帰還編』です。
帰還前のバージョンをプラネタリウムで観て号泣してしまい、
この帰還編も是非観たいと思っていたところ、通常の映画館でも上映を始めたので
意気揚々と観に行き、またしても号泣してしまった作品です。
元々プラネタリウム鑑賞向けの作品という事もあってか、はやぶさに降り掛かる様々な問題を
あくまで淡々とナレーションで説明する作風になっています。
これを退屈と取るか上品と取るか。自分は後者でした。
そもそも周知の通り、『はやぶさ』にまつわるストーリーそのものが、十分感動的な訳ですから
陳腐な演出とかナレーション等を下手に付随させてしまうくらいなら、
これくらいのドキュメントタッチが、『はやぶさ』を取り扱うには丁度良いのではないでしょうか。
また、元が全天周版である影響なのか、四角いスクリーンで観ると不思議な立体感が画面に生まれて、
さながら眼鏡要らずの3D映画を観ているような感覚を味わえたのも貴重な映画体験でした。
『はやぶさ』ファンは勿論、あまり興味が無かった人も、今後どんどん量産されていく映画版より、
まずはこの全天周版の『BACK TO THE EARTH』を絶対に観るべきです。

6位 ハート・ロッカー



2010年度のアカデミー作品賞受賞作。遅まきながらDVDで観ました。
主人公の苦悩に対しての意見が割れている問題作ですが、個人的には、この作品のラストを
"苦渋の中で、しかし家族を守る誇りを持った決断"と取りました。
戦争はクソ。そこにしか居場所を見出せない男もクソ。
「そりゃ分かってる…けど、俺が爆弾バラさなきゃ誰がやるんだよ!?」っていう決意。
この決意がラスト近辺の、ダイナマイト男を救えなかった件から徹底して描かれ、強く胸を打たれました。
映画史に残る"スナイプ戦"を拝めるだけでも一見の価値有り。

7位 ブラック・スワン


バレエシーンにはツッコミどころが多々あるようですが、
ナタリーの迫真の演技と、ラストへ向かってどんどん高揚していく演出は見事!の一言。
何てったってナタリーの●●●●シーンが色んな意味で素晴らしいです。

8位 英国王のスピーチ


身近に吃音持ちの友人が居て、過去にそいつを
面白半分でモノマネしたりしてた自分を蔑まざるを得ない作品。
淡々としていて、映画的な盛り上がりには欠ける作品に見えてしまいますが、
ラストに主人公が、徐々に独り立ちしてスピーチをこなし、まさしく"王"と成っていく様には感嘆。
王と成った主人公を、最後は一歩引いて見守るジェフリー・ラッシュの芝居と演出には感涙。
但し、そのスピーチが「開戦の狼煙」である事を思うと、素直に感動が出来なくなってしまうのは…
映画の観方として偽善的でしょうかね。


9位 映画 けいおん!


詳細は別エントリーにて。
各方面に於いてドル箱と化しているコンテンツを、誠実に劇場版として昇華した、という点で
称賛に値する作品ではないでしょうか。
テンポの良さと気の利いた細かな演出で、『萌えアニメ』なんてアナクロな言葉だけで
簡単に切り捨てさせない作りになっています。
一見さんの鑑賞に耐えられる作りではなく、40回近いTV版を見る事が前提となるので、
門外漢には勧めづらい、という問題はあります。

10位 猿の惑星:創世記


「猿の惑星シリーズとして見るとどうか」という否定的な意見もあるようですが
単体の作品としては傑作と言って良い出来ではないでしょうか。
あらゆる鬱憤や寂寥を溜めに溜めての…「Nooooooo!!!」に、最高の映画的カタルシスが爆発してました。
過去作へ紡がれて行くエンドロールの演出も良かったと思います。

11位 サウダーヂ


上映時間の長さを感じさせない、濃密でリアルなストーリーテリング。
哀しく救いが無い物語なのに、要所で劇場に爆笑が起こる演出も凄い。
自主映画でこのクオリティが出せるんだから、ビッグバジェットで制作してる連中は何やってるの?
って言いたくなるレベルで、とにかく非常に楽しい映画でした。
ここまで「土方」っていうセリフが連発され、マリファナを余す事無く描写する邦画って過去にあったかな?
あと、今年の"タイトルバックの画がカッコいい!!"映画、ダントツでNo,1です。

12位 恋の罪


「頼むから家に戻れ!そのゴミは次の回収日で捨てよう!」
と、スクリーンに向かって祈らずには居られない、秀逸なエンドが光る稀有な作品。
特に序盤に多く見られる、強烈なポルノ的展開は、人によっては拒絶反応が出るでしょうし、
語られるメッセージに対しての上映時間の長さは、もうちょっとどうにかしてほしかったところ。
それでも"THE・園子温印"の作品である事は間違い無いので、『愛のむきだし』や
『冷たい熱帯魚』がハマった方なら、絶対に劇場で観ておくべきでしょう。

13位 ヒックとドラゴン


ピクサーに負けるか!と言わんばかりの、ドリームワークス面目躍如のアニメーション作品。
今更DVDで観てしまったのですが、劇場で3Dで観るべきでした。
丁寧に紡がれるストーリーが見事な上に、ドラゴンの"ライド感"が最高。
この手の作品を、アニメーションってだけで避けている大人達は、黙って観るべし。
但し…ラストのモノローグに出て来る"あるセリフ"で、感動が半減してしまうのは否定出来ず。

14位 ブルーバレンタイン


今年の"エンドロールの演出NO,1"作品。
「なんで結婚なんかすんの?」という疑問を抱かざるを得ないストーリーのアンサー、救いが
エンドロールに全て詰まっておりました。
些細な言葉のやりとりやカメラワークで、夫婦間の温度差やすれ違いを見事に演出している点も素晴らしいです。
間違っても、結婚を考えている恋人とは絶対に観ないで下さいね。

15位 息もできない


日本では昨年公開の作品ですね。ボンクラの一代記として名作です。
初監督作とは到底思えない程、細かな演出が巧みで、グイグイ物語に引き込まれてしまいました。
それでも、余りにも救いが無さ過ぎるラストのストーリーと、
「なんで韓国映画って、ここまでバイオレンス表現が好きなんだろう?」
という疑問が邪魔して、個人的に消化不良を起こしてしまったのが残念でした。
観終わった後2週間くらいは、腹の立つ事があると脳内で「シバラマ~!」と叫んでしまう事請け合いです。

16位 劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ


クライマックスでの高揚感だけに限って言えば、今年公開作の中ではぶっちぎりのNo,1ではないでしょうか。
多少の物語の粗さはラストのライブシーンだけですっ飛ばしてくれてます。
フィクションの中で描かれるライブって、得てしてショボく見えてしまうモノですが
"ニコ生"が効果的に作用して、しかも物語とコミット出来てる時点で傑作かと。

17位 リアル・スティール


今年ラストの鑑賞作。王道もここまでやり切れば、ご都合主義にも目を瞑ろう!
と白旗を振りたくなるレベルで、あらゆる名作へのオマージュが
散りばめられ、正統派ストーリーをこれでもかと踏襲してくれます。
日本へのリスペクトも多く感じる事が出来ますし(ロボット名ATOMですからね)
何よりも「シャドウ機能」の活かし方が巧妙です。
お涙頂戴系のベタな作品でしょ?と敬遠せずに、是非劇場で
『Look at Me!!』という最高の名台詞を体感してみて下さい。

18位 トーキョードリフター


詳細は別エントリーにて。
アコギの弾き語り好きなら一見の価値あり。
同時に、この映画の作り手達より「東京が好き」かどうか、確かめて見て下さい。

19位 インセプション


今年に入ってDVDで観ました。
何よりも、ここまで"夢の中の世界"を視覚化してくれただけで、映画として楽しかったです。
細かな設定の揚げ足を取ろうとすれば幾らでも取れる作りではあるのですが、
ちょっと非現実的な体験をした時に、「今のオレ、第何層に居るんだ!?」と
インセプション用語を盛んに使いたくなる程度に良作だったと思います。

20位 岳 -ガク


原作をこよなく愛してるいる立場として、"小栗旬・長澤まさみで実写映画化!"と聞いた時に抱いた
「うわ…、コケそう……」という不安を、良い意味で裏切ってくれた出来ではありました。
ただ映画の尺に収めようとすると、"遭難者出過ぎ!&長澤まさみ勝手過ぎ!"
という問題は予想通り現出しております。
それでも、原作で徹底している"山岳LOVE!"の精神には、
最低限の筋を通してくれているので、それだけで合格点。
この映画を観て「面白い!」と思った方、原作漫画はその100倍「面白い!!!」ですよ。

21位 さや侍


広範で既に言われていますが、この一言に尽きます。
「普通の映画に寄せようとして、普通にダメになっちゃった」
この手の映画に、「時代考証とちゃんとしろ」とか絶対言いたくないんですけど、
切腹をクライマックスに持ってくるなら、それ相応の設定はちゃんと組んでおこうよ。
演出の稚拙さとあいまって「その切腹、ただのナルシズムですから!感動出来ませんから!」
と突っ込みたくなるんですよ。とにかく脚本だけは、もうちょっとブラッシュアップしましょうよ。
野見さんが見せる、ラスト近辺の2度の"笑顔"の怪演っぷりと、
「大日本人って、何だかんだで俺は好きだったな!」と気付かせてくれた、とい点に於いて
個人的には価値ある作品ではありましたが…。

22位 第9地区


これも遅まきながら今年に初見。
この作品は、「これが差別だ!」「ほーら、前半でお前は差別してただろ!」と、主人公を通して強烈に罵られるような、
前半と後半の立ち位置を逆転させる脚本・演出の勝利ですよね。

23パイレーツ・オブ・カリビアン 命の泉 




ジャック・スパロウとしてのデップが観たくて、ついついシリーズを追いかけてしまい、
副産物的にペネロペを愛する事も出来た、相変わらずキャラクター映画です。
エンドロール後の仕掛けを観る限り、まだまだスパロウを追いかける事が出来そうで何より。


24位 モテキ


この映画を劇場で観た野郎共は、確実に全員が長澤まさみに魅了されて
若干前屈みで座席に座らざるを得ない!でもそれ以上の見せ場が無い!という作品。
ナタリーとのコラボとか、Perfumeを使った『(500)日のサマー』オマージュとか、
ブギーバックで楽しいエンドロールとか、工夫は見えるんですけど、
そのどれもがストーリーの本筋とあんまり関係が無い上に、"巧くない"のが残念なところ。
何よりも、人によって評価が別れているようですが、個人的にあのラストの演出だけは、
絶対に共感も飲み込む事も出来ない!キス一つで色んなエクスキューズをスルーしてんじゃねー!と。
まぁ音楽の使い所は好みだし、今後もTwitterで趣味が合う"男っぽいアイコン"の人には
積極的に絡んで行こう!という夢を与えてくれた、という点で
評価したい、評価させてくれ、といった感じでしょうか。
主演の二人、特に森山くんの、文字通り体を張った名演技の数々は白眉の出来。

25位 ミッション:8ミニッツ


パラレルワールドの設定には突っ込みたい箇所が幾つかあります。
しかし己の生への執着を超えて、最後は国家の為、そしてどうしても守りたい女性の為に
文字通り命を賭けてミッションに向かう主人公には、素直に胸を打たれます。
ただこれだけは言いたい。
『警告:このラスト、映画通ほどダマされる』
↑この死ぬほどダサいコピー考えた人に、
『的外れなコピーほど、観客を遠ざける』んだよ!…と警告したいです。

26位 DOCUMENTARY of AKB48 to be continued


まず、この作りで"ドキュメンタリー"を謳うんじゃねーよ、と言いたいですね。
ただのインタビュー集ですから。公開直前にNHKで放映された特番の方が
"たかみな具合悪ぃんだから"旋風をネットで巻き起こした時点で、よっぽど上質なドキュメンタリーでした。
(くわしくは「たかみな ぐ」まで検索窓に打てば、google先生がサジェスチョンしてくれます)
残念ながら、"AKBに全く興味の無い人が、これをキッカケに…"という形を成してもいませんので
あくまでファンムービーであって、それ以上の意義はこの映画には存在していません。

27位 マネーボール


『メジャーリーグ』みたいに、安易な映画的カタルシスに走らず、淡々とした語り口で、
そして主人公の視点に絞って物語を構築した点は高評価。
残念なのは、この演出では主人公が過去の挫折を忘れられず、私怨でスカウトを解雇し、
たまたま目を付けた他人の理論を上手く利用した、物に当たってばかりの傲慢GMに
見えてしまいかねない点(敢えてそう作っているのだろうけれど)。
もうちょっと、この理論の構築に主人公の意見を取り入れる、といったシーンを入れるだけでも
だいぶ印象が変わったと思うんですけどね。
実際のアスレチックスの快進撃が本当にドラマチックだっただけに、もう一工夫欲しかったです。

28位 コクリコ坂から


宮崎吾朗の名誉挽回作としては、そこそこ成功したと言って良いのではないでしょうか。
"カルチェラタン"の描き方は、僕らがジブリ映画に望むワクテカ感が詰まっていたように思います。
問題は、そもそも原作漫画からして、ジブリ映画に不向きな内容である点と
カルチェラタン以外の作画が「…雑じゃね?」と感じてしまうクオリティである点。
更に主人公達の生い立ちが、複雑な上に説明が下手糞で、
「…で、結局君達がここまで思い悩んで来た事は何だったんだい?」という疑問が解消されず
感情移入が全く出来なかった事が、個人的には致命傷でした。

29位 ツーリスト


"デップとアンジーの夢の共演ですよ~"っていう、ただそれだけ。
この役にデップを持ってきちゃってる事自体、その存在そのものがネタバレになってしまっている始末。
デップの表情を眺めながら、「あぁ、今回もデップはお茶目だなぁ」と、うっとり眺めながら2時間過ごすのが正解。

30位 ステキな金縛り


三谷幸喜さんって、こと映画に関して言えば、脚本…下手じゃね…?
という疑問を確たるモノとした作品ではないでしょうか。
面白くなりそうな要素を、自らの演出でことごとくつまらなくしてしまってるんですよね。
やっぱりこの人、舞台演出が一番合っていて、
映画では、密室劇だった『ラヂオの時間』が、演出の空間的限界なのでは?と。
それでも満員の劇場ではあちこちで爆笑が起こっていて、
世間との乖離を深く実感してしまい、物悲しい気持ちにさせられました。

31位 はやぶさ/HAYABUSA


先述の全天周版と対照的に、こちらは劇映画として様々な要素を付随させた、堤幸彦氏監督作品。
その付随させた要素が、とにかく陳腐で冗長な上、ご都合主義で短絡的で説明不足という残念な出来です。
最も顕著な例として、主人公である筈の竹内結子の存在意義が皆無になっちゃってます。
これでもTV版『ケイゾク』までは堤氏のファンだったのですが、『20世紀少年』然り、
映画監督しての堤幸彦作品には"当たり"が一切無いというレベルで、安心のブランド力を構築していってますね。

32位 探偵はBARにいる


一言で言えば大泉洋のアイドル映画です。それ以上でも以下でもないです。
『傷天』とか『探偵物語』をやりたいのは分かる。
分かるけど、だからってご都合主義やトンデモ設定の免罪符にはならねぇ!と言いたい。
現代を舞台にハードボイルド劇をやる事自体に無理があるんだから、
その分ストーリーはしっかり練りましょうね、と。
それなりに大泉洋は好きですが、それでも退屈な120分でした。

33位 スイートリトルライズ


勧められてつい先日観た、昨年3月公開作品。
この作品だけはどうにも擁護が出来ず、以下完全に怒りをブチ撒けただけの内容になっておりますので
この映画の大ファン!という方は読み飛ばして頂く事をお勧めします。

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結論から言って、「全然理解できないし、したくもない」としか思えない類の映画でした。
"それっぽい"だけの、言わせたいだけだろ!っていう噴飯モノの台詞の連発で、
要所を濁そうとするのがとにかく腹立たしいですね。

何よりもこの夫婦、少なくともこの作品の中では一切のペナルティも課されず、
旦那に至っては反省すらしてんのかしてないのか分からないような状態で
(しかもその状態で「腕に入る?」とか抜かしやがる)、
極めて宙ぶらりんなまま夫婦関係を続けようとする上に、
さもこの関係こそが甘美であるかの様に描くんですよ。ハッキリ言って胸糞が悪いです。
「それは…それはとてもスイートじゃないか…」ってセリフが出た時に、今年ワーストが確定しました。

浮気や不倫を全否定したい訳じゃ決してないんです。
ただね、登場人物の殆どが全く成長せず、掘り下げられもせず非常に記号的で、
それぞれが好き勝手に逃避を繰り返し、問題を一切解決しようとしないまま、
ただ収まりの良い所に収まってるだけ、ただそれを観させられるだけの作品って、
果たして何の価値あるんだ?って事なんですよ。
『ぐるりのこと。』の、さりげないけど確かな主人公の独白を見習って下さいよ。
それだけで感情移入出来るんだから。それだけで映画の楽しさが圧倒的に増すんだから。
唯一、本当に唯一の光明として、池脇千鶴の瑞々しい演技だけが救いでした。
原作は未読なのですが、ここまで腹立つと、逆に読みたくなってきますね。

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以上、2011年(初見)映画ランキングでした。

長文映画レビューシリーズ 『映画 けいおん!』



言わずと知れた人気アニメの劇場版。
この手の『人気が出たので映画版まで引っ張ります!』的映画にはさんざん痛い目に合わされてきたので、相当に身構えて観に行きました。


※どうやら劇場版の物語の根幹を、ホームページ等で公開していない(むしろミスリードしてる)ようなので、ネタバレせずにレビューを書く事が不可能でした。これから鑑賞する予定のある方は、以下読み飛ばして下さい※


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TVシリーズで高校を卒業しちゃった軽音部。
映画化に際してどういったストーリーを組むのかと思ったら、唯一の後輩部員である『梓』に、ある曲を贈るという、TV版では細部まで描き切れていなかった要素を拡大する手法を持ってきました。
ここを切り取って映画化する事で、実は幾つか問題が発生しているのですが、それはひとまず置いておいて、結果的に"梓にプレゼント"を持ってきた事自体は成功していると思います。
大学編を描いたら梓は置き去りになっちゃうし、総集編ではファンに不誠実。
オリジナルストーリーを描くなら、寧ろこれしか残っていない、と言ってもいい要素でしょう。


導入部を過ぎると、物語は「お前らの家族…随分裕福な上に放任なのな」突っ込まざるを得ない、電話一本で承諾を得る無理矢理な卒業旅行編へ移ります。
しかしここもTV版から引き続き、非常にテンポが良いですし『初海外旅行あるある』としてのユーモアで、飽きさせないように作ってますね。
そもそも元から親族が記号的にしか描かれていない作品なので、旅費とか保護者の観点とか、細かい事は(ギリギリのラインではあるが)どうでもいいんだよ、とフォローも出来ます。
演出もなかなか良く、やや展開が強引な寿司屋でのライブシーンも、序盤の見せ場として機能はしてますし、アビーロードを横断するも、本人達はなんか気付いてなさそうな件とか秀逸だと思います(ジミヘンがどうこう言ってるクセに…という不自然さは残りますが)。
何よりこのロンドン編は『梓へ贈る曲作りの為のロードムービー』というシークエンスですよね。
ビッグベンありハイドパークあり、ノルウェイの森を始め数々のUKロックシーンをオマージュしたBGMなんかもさりげなく流したりしてます。
後半のライブシーンでの、天然だけど優秀な唯のフロントマンっぷりを見ても、このシークエンス自体、本当に良く出来てます。


メンバーが帰国してからは、いよいよ梓へ曲のプレゼント、というクライマックスに向かう訳ですが、曲作りのキーイメージとなる『鳩』は、ロンドンでのライブシーンでも印象的に描かれていました。
少なくとも唯の視界には入っていた筈で、これだけで無理矢理に見えた卒業旅行に、急激に説得力が増してるんですよ。
この『鳩』の描き方一つとっても、冗長になる事も無く、気の利いた演出だなぁ…感嘆してしまいます。
おまけに、一度TV版で披露済である梓への演奏シーンには、実際に演奏してる様ではなく練習シーンをカットバックさせるという隙の無さ。
ラストのライブシーンでは、TV版オープニングと同じカットでの演出というサービス精神。
もうなんか末恐ろしいですね。


全く突っ込みどころが無い!完璧!とはさすがに言えません。
「空席の如何に関わらず、飛行機内に楽器の持ち込みは(まして無料では)出来ねーよ」とか「どう転んでもそこで感電はしねーよ。むしろ危ないのはシンセだよ」とか、楽器のディテールに拘ってきた本作だからこそ、言いたい点は多々あります。
特に『そのギター、日本のブランドじゃないでしょ?』というセリフは、言う人が言う人だけに噴飯モノでした。
加えて、一見さんお断り…とまでは言いませんが、TV版未見での鑑賞に耐え得る作りにはなっていないし、逆にコアなファンからしてみても、一部存在感が希薄になっている主要キャラが不憫に、もっと言えば怒りを感じる層も居るでしょう。

そもそもTV版の番外編との整合性が全然取れなくなっている点も大問題。
更に冒頭で少し書いた通り、この"梓に贈る歌"話を映画用として切り取った弊害もあって…

「TV版で、その曲練習してるシーン全然無いじゃん、所詮後付けじゃん」

…と、なってしまうこと。
個人的には「TVで全然描いて無いからこそ、映画で扱う余地があるんじゃないの?」と取りましたが、この点が飲み込めないと、作品全体を飲み込めなくなるリスクは確実に孕んでいます。
でもそんな、数多の突っ込みも"無粋!"とすら思わせるくらい、劇場版として非常に誠実な作りにはなってますよ。
と言うのも、先述した通りある種ドル箱的コンテンツになっちゃってますから、梓へはTV版とは違う新しい曲を作る話にして、新曲としてリリースするとか、話の結論を先延ばしにて3期に繋げちゃうとか、いくらでも商業主義に走る事も出来た筈なんです。
腐った精神で作られたとしか思えない、不誠実な『劇場版』だって、掃いて捨てるほどあるんですから。
でも決してそうはせず、丁寧にストーリーを構築して、気の利いた演出も散りばめて、劇場版長編を製作する必然を全うしただけで「良くやった!」と賛辞を贈る出来になってますよ。これだけで素晴らしいです。

あと最後に特筆しておきたい点として、やっぱり唯というキャラクターの描き方は秀逸の一言で、「天使」というこそばゆいフレーズも、こいつが言うとあまり嫌味に聞こえないんですよ。
ご丁寧に作中で「臭くねぇか?」なんてセリフを言わせてますけど、そこまでのストーリーで自然に放物線を描けているので、着地点としては全然臭くない。お見事です。



そんな訳でグダグダとした長文になってしまいましたが、誠実に劇場版を紡いだ製作陣には、素直に称賛を贈りたい良作でした。
分かり易い映画的な盛り上がりは無いんですけど、"映画化!"って響きに懐疑的になっている方も、TV版で楽しめた方なら絶対に観て欲しいなぁと思っております。